金沢の賑やかさと華やかさを満喫し、旅はいよいよ終盤へ。帰り道をただの移動時間として過ごすのは、少し惜しい気がします。せっかくなら、その道のりも旅の一部として楽しみたいもの。北陸を縦に巡ってきた今回の旅を締めくくるのは、「道の駅めぐり」。立ち寄るごとに出会える風景や味覚を確かめながら、敦賀へと戻るドライブを振り返っていきます。
道の駅 蓮如の里あわら 〜静けさに包まれた休憩スポット〜
近江町市場での食べ歩きから車を走らせること約1時間。そろそろ体に疲れを感じ始めたころに立ち寄ったのが、加賀市とあわら市のちょうど境目にある「道の駅 蓮如の里あわら」でした。到着したのは午前11時15分、陽射しが少しずつ強さを増していく時間帯。
道の駅自体は大きな規模ではありませんが、静かで落ち着いた雰囲気に包まれており、どこか上品さを漂わせています。観光地特有の喧騒から一歩離れ、ゆったりと時間が流れる空間。駐車場はおよそ3分の2ほどが埋まっていましたが、不思議と混雑感はなく、すんなりと車を停められるのも安心でした。

お土産コーナーは思いのほか充実していて、福井やあわらならではの特産品がきれいに並べられていました。観光客向けというよりは、地元の方が「ちょっといいもの」を選びに立ち寄るような印象。ひとつひとつの商品が丁寧に扱われていて、見ているだけでも心が落ち着きます。
道の駅の向かいには広々とした公園があり、休日らしく家族連れの姿もちらほら。小さな子どもたちが元気に駆け回る様子を眺めながら、旅の途中にこうした“日常の風景”に触れられることもまた、心に残る体験だと感じました。ほんのひとときでしたが、静かに旅の余韻を味わえる時間となりました。

30分ほどの休憩を終えて時計を見ると、すでに11時45分。少し身体を伸ばして深呼吸すると、再び走り出す準備が整ったような気がしました。次の目的地へ向かわなければ…と頭では思いつつも、どこか名残惜しい気持ちも残ります。
敦賀までの道のりはまだ長く、これからどんな景色や小さな出会いが待っているのか。そんなことを考えながら、再びハンドルを握りました。旅の終盤に差し掛かる時間帯だからこそ、一つひとつの寄り道が、より愛おしく感じられます。
道の駅 西山公園・西山動物園 〜レッサーパンダに会える場所〜
車を再び走らせて、次にたどり着いたのは「道の駅 西山公園」。ハンドルを握りながら信号の多い市街地を抜け、次第に緑の多い内陸へと入っていくと、旅のリズムも少し落ち着いてきます。ここに到着したのは午後1時。あわらを出発してからおよそ1時間半、ちょうどお腹も空いてきた頃合いでした。
西山公園といえば、日本海側最大級のつつじの名所として知られ、春には鮮やかな花のじゅうたんが広がる場所。その入口にある道の駅は、観光拠点というだけでなく、地域の暮らしにも寄り添った雰囲気が漂っていました。駐車場には観光バスよりも地元ナンバーの車が目立ち、日常と旅が交差するような空気感が心地よい。

この道の駅の特徴は、なんといっても隣接する「西山動物園」の存在でしょう。道の駅の建物を抜け、少し階段を上っていくと、緑に囲まれた小さな動物園が広がっています。そこには愛らしいレッサーパンダや、軽やかに動き回るシロテナガザルの姿。檻越しに目が合うと、思わず笑みがこぼれてしまうような距離感です。
動物園といっても広大な施設ではなく、無料で楽しめる気軽さが魅力。親子連れがゆったりと散策しながら動物を眺めたり、ベンチで休憩する姿が多く見られました。観光客が足を止める場所であると同時に、地元の人たちのちょっとした憩いの場にもなっているようで、その和やかな雰囲気に癒やされます。

暑さのせいもあって展望台まではたどり着けませんでしたが、途中から見える景色だけでも十分に爽快でした。木々の間からのぞく市街地や遠くの山並みは、日常の風景にほんの少し非日常の輝きを添えてくれます。
都市のざわめきから少し離れただけで、動物と自然、そして展望までもがそろった場所に出会える。この贅沢なバランスこそ、福井ならではの魅力のひとつなのかもしれません。

ここでは少し小腹が空いたので、「吉川バーガー(てりやき)」をいただくことにしました。お値段は500円と手頃で、気軽に楽しめます。興味深いのは、肉の代わりに柔らかい大きなナスが使われていること。最初は「ナスでバーガー…?」と半信半疑でしたが、一口食べてすぐに納得しました。
甘辛いタレとふんわりしたパンに包まれたナスは、ジューシーな肉のような食感と存在感がありながら、軽やかでヘルシー。驚きと満足感が同時に味わえる、一風変わったバーガーでした。こうした地元ならではの工夫や個性に触れることも、旅の楽しみのひとつです。

道の駅 河野 〜日本海を望むラストステージ〜
敦賀へ戻るドライブの最後に立ち寄ったのは、「道の駅 河野」。名前の通り、まるで海の上に立っているかのような絶景が広がる場所です。視界いっぱいに広がる日本海は、波のきらめきや空の青さと相まって、言葉にできないほどの迫力を感じさせます。
穏やかな潮風に吹かれながら景色を眺めていると、これまで巡ってきた道の駅や沿道の風景、出会った小さな発見の数々が、自然と頭の中でゆっくりと蘇ってきます。旅のフィナーレとして、これほどふさわしい場所は他にないと感じられる、そんな瞬間でした。

飲食スペースやお土産屋はこぢんまりとしていますが、その素朴さこそが魅力に感じられます。派手さはないものの、確かにここには「海と共にある暮らし」が息づいているような印象を受けました。
椅子や机も十分に用意されており、ドライバーにとってはありがたい休憩の場です。軽食を手に取り、潮風を感じながらゆったりと過ごす時間は、派手な贅沢ではないかもしれません。しかし、心にそっと残る穏やかさや満足感がある――そんなひとときを味わうことができました。

旅を終えて敦賀へ
こうして立ち寄りながら進んだ帰り道。目的地に急ぐのではなく、あえて寄り道を重ねることで、北陸の旅は「終わり」ではなく、ゆったりとした「余韻」になりました。金沢の華やかさ、福井の素朴で温かい風景、それぞれの土地の魅力が、帰路の中にも自然と刻まれています。
敦賀に戻ったとき、心地よい疲労感と共に残っていたのは、「また訪れたい」という思いでした。旅の最後に立ち寄った道の駅たちは、決して派手ではありません。しかしその控えめで落ち着いた存在感が、静かに、けれど確かに心に残る――そんな余韻を届けてくれる場所でした。
まとめ
福井から金沢、そして敦賀へと巡った今回のドライブ旅。観光地だけでなく、道の駅という小さな立ち寄り場所にこそ、その土地の素顔が現れていました。上品で落ち着いた「あわら」、動物と自然が共存する「西山」、そして雄大な日本海を望む「河野」。それぞれが個性を放ち、旅を鮮やかに締めくくってくれました。
次に北陸を訪れるときも、きっとまた道の駅をめぐりながら、新しい「余韻」を探すことになるでしょう。そう考えると、帰り道さえも次の旅の序章に変わっていきます。