京都・東舞鶴――「港町」と聞くと、どこか素朴でのんびりとした風景を思い浮かべる方も多いかもしれません。けれど、実際に足を運んでみると、その印象は良い意味で大きく覆されました。
重厚な趣を残す赤レンガ倉庫群、山の上から舞鶴湾を一望できる五老スカイタワー、そして心に深く響く舞鶴引揚記念館。どの場所もただ「訪れる」だけでは終わらず、そこに込められた物語をじっくり味わいたくなる特別な魅力を秘めています。
最後はカフェで静かに一息。観光も、歴史も、食も――そのすべてを一度に感じられる。
そんな贅沢で満ち足りた時間が、東舞鶴には流れていました。
09:30 東舞鶴駅到着 ― 港町の入り口から旅の幕開け
東舞鶴の玄関口、東舞鶴駅。
舞鶴市内の中心として観光の拠点となるこの駅に降り立つと、まず感じるのは――港町らしい、どこか柔らかな潮の香り。
京都府の海側というと、京都市内の雅な雰囲気とはまるで違います。
少しラフで、でもどこか上品さが漂う不思議な空気感があるのです。
朝9時半。駅前には地元の人と観光客がほどよく行き交い、にぎやかすぎず、静かすぎない心地よい空気が流れていました。ここから始まる一日の物語を思うと、自然と胸が高鳴ります。

10:00 舞鶴赤レンガ倉庫群 ― 異国情緒と歴史を感じるスポット
最初の目的地は、レンガ造りの建物が整然と並ぶエリア、「舞鶴赤レンガ倉庫群」。
旧海軍の倉庫として建てられたこの一帯は、時を経て今ではカフェやお土産ショップ、博物館などとして再生されています。
歴史の重みを感じるレンガの壁は、どこを切り取っても絵になる美しさ。
外から眺めるだけでも十分魅力的ですが――せっかく来たなら、ぜひ中へ。
カフェでひと息ついたり、資料館で往時の姿に思いを馳せたりと、「見て終わり」ではない楽しみ方ができるのがこの場所の魅力です。

赤レンガ博物館で学ぶ“レンガの世界”
赤レンガ倉庫群のすぐ近くにある「赤レンガ博物館」は、かつての倉庫を活用した建物で、舞鶴の歴史を語る象徴のような存在です。
館内に入ると、まず目に映るのはレンガの魅力を紹介する映像。
古代エジプトの建築からヨーロッパの街並み、そしてガウディ建築へと続くその映像を見ているうちに、レンガという素材が世界各地で長く人々の暮らしを支えてきたことを実感します。
展示室には、国や時代ごとに異なるレンガの色合いや模様が並び、静かな空間の中でその多様さをじっくり味わえます。
再現されたホフマン窯の内部にも入ることができ、当時の職人たちの技や手仕事に思いを馳せる時間もまた貴重です。
外へ出ると、赤レンガの壁と澄んだ青空が美しいコントラストを描いていました。
建物の間を歩くだけでも、どこか懐かしさと温もりを感じる場所。
写真を撮りたくなる魅力はもちろんのこと、静かに佇むだけでも心が落ち着く、そんな時間が流れていました。

基本情報
- アクセス:JR東舞鶴駅 徒歩15分/車:「舞鶴東IC」6分
- 営業時間:9:00~17:00(施設により異なる)
- 入館料 :大人400円/学生150円
- 駐車場 :あり(有料/1時間100円~)
- 特徴 :旧海軍倉庫を利用した歴史的建造物。展示・イベント・写真スポットで人気
11:30 五老スカイタワー ― 舞鶴湾と若狭湾の絶景を独り占め♡
赤レンガ倉庫群を後にして、次の目的地は「五老スカイタワー」。
山道を車で登っていくにつれ、港町の景色が少しずつ遠ざかり、緑の中を抜ける爽やかなドライブになります。
道のりはやや長く感じられますが、その先に広がる景色を思うと、不思議と足取りも軽くなるようでした。

ようやく辿り着いた展望台は、まさに圧巻の眺め。
五老スカイタワーの展望フロアからは、東舞鶴・西舞鶴の街並みをはじめ、舞鶴湾から若狭湾へと続く雄大な景色を一望できます。
空と海が溶け合うような青のグラデーションは、まさに「日本百景」に選ばれるにふさわしい美しさ。
訪れた日は人も少なく、展望台には数組の観光客が静かに景色を楽しんでいました。
ベンチに腰を下ろし、海風を感じながらゆっくりと流れる時間に身を委ねると、日常の喧騒がすっと遠のいていくようです。
上から眺める舞鶴の街はどこか穏やかで、海とともに生きる町の姿を感じさせてくれます。
「この景色こそ、舞鶴の魅力を一番に伝えてくれるもの」――そう思えるほど、心に残るひとときでした。

基本情報
- 住所 :〒624-0912、京都府舞鶴市上安237
- アクセス :JR舞鶴線「東舞鶴駅」から車で約15分
- 営業時間(冬):12月~3月:9:00〜17:00(平日/土日祝)
- 営業時間 :4月~11月:9:00~19:00(平日)、9:00~21:00(土日祝)
- 休館日 :年中無休
- 料金 :大人(高校生以上)300円、小中学生150円
- 駐車場 :あり(85台)
- 特徴 :舞鶴湾や若狭湾を一望できる展望タワー。日本百景に選ばれた景色が見どころ。
13:00 ランチ:麺楽 ― 地元の味を堪能する誘惑タイム
午前中の観光を終えるころには、ちょうどお腹も空いてきたので、地元の人気店「麺楽(めんらく)」へ立ち寄りました。
少しレトロな雰囲気の店内には常連さんの姿も多く、どこか懐かしくて温かい空気が流れています。観光地の華やかさとはまた違う、地元の日常を感じられる場所です。
注文したのは「ラーメンとチャーハンのセット」。
写真を撮ろうと思ったのに、気づけば箸が先に動いてしまうほど、香ばしい香りに誘われてしまいました。
特にチャーハンは絶品で、パラパラとした食感の中にほんのりとしたしっとり感もあり、絶妙なバランス。
ラーメンは昔ながらの優しい味わいで、どこか懐かしさを感じさせてくれます。派手さはないけれど、飽きのこない誠実な一杯でした。
観光の途中でほっと一息つきたいとき、地元の人々に愛されるこうしたお店を訪れるのも、旅の醍醐味のひとつ。
お腹も心も満たされ、午後のドライブに向けて気持ちを整えることができました。
基本情報
- 所在地 :〒625-0036、京都府舞鶴市浜441-2
- アクセス :JR東舞鶴駅から徒歩約9〜10分
- 営業時間 :11:30〜24:00(ラストオーダー 23:30)
- 定休日 :月曜日
- 席数 :28席
- 駐車場 :あり
- 支払い方法:カード・電子マネー不可/QR決済(PayPay・d払い・楽天ペイ・au PAY)可
14:30 舞鶴引揚記念館 ― 歴史を肌で感じる場所
お腹を満たした後は、少し気持ちを整えたくて「舞鶴引揚記念館」へ向かいました。
赤レンガ倉庫が“外向きの歴史”を魅せてくれる場所だとすれば、こちらは“内側の歴史”を静かに語りかけてくれる場所。
建物の前に立つと、まず感じるのは深い静寂。
観光地というより、心を落ち着けて過去と向き合うための空間といった印象です。
館内では、戦後シベリアなどからの引き揚げにまつわる資料や手紙、映像などが展示されています。ひとつひとつに込められた思いを辿るうちに、時間の流れがゆっくりと変わっていくのがわかります。
派手な展示ではありませんが、丁寧に残された記録の数々が、静かな感動を呼び起こしてくれました。

受付を済ませて中に入ると、まず映像が流れ、戦後に舞鶴が果たした「引揚」の重要な役割について学ぶことができます。
椅子に座って映像を見ていると、いつの間にか背筋が自然と伸び、気持ちが引き締まるような感覚に包まれました。
中でも印象に残ったのは「抑留生活体験室」。
少し温度が下げられた薄暗い空間の中で、当時の厳しい環境をほんのわずかに体感できる展示です。肌に触れる冷たさや静けさが、文字や映像以上にリアルに“当時”を感じさせてくれました。
館内をゆっくりと巡った後は、裏手の歩行路へ。
階段を登ると、かつて引揚船が入港し、実際に多くの人々が上陸した港を見渡せる展望台があります。穏やかな海を前にして、「この景色を見ながら帰国した人々は、どんな思いだったのだろう」と想像すると、ただの風景とは違う深い重みを感じました。
舞鶴を訪れるなら、観光の合間にこうした「学びの時間」を持つのもおすすめです。
歴史を知ることで、この町の魅力がより静かに、そして深く心に残ります。

基本情報
- 住所 :〒625-0133、京都府舞鶴市平1584
- アクセス:JR舞鶴線「東舞鶴駅」からバスで約20分、「引揚記念館前」下車すぐ
- 開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
- 休館日 :毎週水曜日、年末年始
- 入館料 :一般400円、学生(小学生~大学生)150円
- 駐車場 :無料駐車場あり
- 特徴 :シベリア抑留や引揚げの史実を伝える資料館。ユネスコ「世界記憶遺産」にも登録されている貴重な展示がある。
16:00 市街地散策&カフェ休憩 ― 十番館で小悪魔的ひととき
午後の締めくくりは、東舞鶴駅前にある喫茶店「カフェ・ド・十番館」へ。
外観からして少しクラシカルで、どこか懐かしさを感じる佇まいです。
店内に入ると、やわらかな照明に包まれた空間が広がり、家族連れや友人同士のお客さんでほどよく賑わっていました。それでも不思議と騒がしさはなく、落ち着いたBGMとともに心がふっとほどけていくような居心地の良さがあります。

この日は「today’sコーヒー(500円)」と「チキンサンド(900円)」をオーダー。
しっかりした味わいのコーヒーは、ちょっと疲れた体にじんわり染みわたり、チキンサンドはボリュームたっぷりで、香ばしいパンとジューシーなチキンの組み合わせが絶妙でした。
窓の外を眺めながら、今日一日を振り返る──そんな時間が、旅の締めくくりにぴったり。
旅行の最後にこうしてカフェでゆっくり過ごす時間は、意外と記憶に残ります。観光の余韻を味わいながら、「今日もよく歩いたな」としみじみ思う瞬間でした。
舞鶴の街をめぐる旅は、海や歴史の記憶、そして人々の穏やかな暮らしがそっと重なり合うような時間。
観光地としてだけでなく、「また来たい」と思わせてくれる不思議な魅力がありました。

基本情報
- 所在地 :京都府舞鶴市南浜町20-5 ホテルアルスタイン1F
- アクセス:JR東舞鶴駅から徒歩約1~2分
- 営業時間:11:00~21:00(L.O.20:30)
- 定休日 :火曜日定休(ただし祝祭日・連休中は営業)
- 席数 :30席(カウンター含む)
- 駐車場 :あり
17:30 帰路 ― 一日の締めくくり
夕方になり、そろそろ帰路につく時間。
赤レンガ倉庫の重厚さ、五老スカイタワーからの絶景、舞鶴引揚記念館での学び、そしてカフェ・ド・十番館でのひととき――一日のあらゆる瞬間が心にしっかり刻まれました。
東舞鶴は「ただの港町」と一言で片づけるにはもったいない場所です。
歴史も自然もグルメも、どれもがそれぞれの奥行きを持ち、訪れる人に静かに魅力を伝えてくれます。
季節や時間を変えて再び訪れれば、また違った顔を見せてくれることでしょう。
こうして一日の旅を振り返ると、東舞鶴はただの観光地ではなく、心に残る時間を提供してくれる街だと改めて感じます。
旅の締めくくりに、静かに港町の余韻を味わうひとときは、忘れられない思い出として胸に残ることでしょう。
まとめ
東舞鶴の旅は、歴史と絶景、そしてグルメが見事に融合した一日でした。
赤レンガ倉庫群で異国情緒を味わい、五老スカイタワーから海と街を一望し、ランチで地元の味を堪能。舞鶴引揚記念館で歴史に触れ、最後はカフェでゆったりと一息つく。
この順に巡ることで、東舞鶴の魅力をぎゅっと凝縮して楽しむことができます。
港町ならではの落ち着きと上品さ、そして訪れる人を自然に惹きつける魅力――東舞鶴はそんな街です。
また次の訪問を思い描きながら、今回の旅のページを静かに閉じる。
一日を通して得た景色や体験は、心の中でいつまでも色あせることなく残ることでしょう。
※掲載している営業時間や料金の情報は変更になる場合がありますので、お出かけの際は事前に公式サイトをご確認くださいね。

